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JEF SICARD
UNE INTERVIEW EXCLUSIVE réalisée par daNIel le 02/07/2007 dans son studio de répétition du Boulevard de La Villette (Paris 19).

ここはヴィレット大通り。暗証番号を押して、道に面した最初のドアを開けると(訳注:パリのアパルトマンの共通エントランスのドアは、通常、キーまたは暗証番号ロック・システム)、また次のドアがある。暗証番号を押す。さらに三番目のドア。重く、分厚い。そして4番目のドアを開けると…。遂に、ドアで隔てられない世界に辿り着いた。そこは音楽の世界であり、Jef (ジェフ)の世界だ…。

Jef Sicard (ジェフ・シカー)は、通常、言葉を使ってではなく、楽器を吹いて表現している。今日は、例外的にサックスと法螺貝をテーブルの上に置いて、お茶を飲み、語る…。僕たちはそんな貴重な時間を持った。

JEF SICARD

Daniel(以下D):ごくごく平凡な人の人生とアーティストとの違いってなんだと思う? ジェフの場合は、それが音楽なんだろうけど…。

Jef (以下J) :そうだね。かといって音楽なら何でもってわけではないよ。どんな音楽にどんなアプローチのをするかってこと。そこは、厳密なんだ。自分のアプローチの仕方でなければ、音楽だって、きっとやっていなかったと思うからね。クラシック音楽のように楽譜があって、ただそれを演奏するだけだったら、音楽やってないだろう な。そういうことには全く興味を持たなかったはずだよ。インプロヴィゼイションに魅かれているんでね。そして、それに付随してくるけれど、楽曲作品を読むこと。けれどもその動力はインプロにあるんだ。

Daniel:インプロはどんなドアを開けてくれるのだろ う?

Jef:自由へのドアさ。

Daniel:じゃあ、ジェフと同じような方法論でなければ自由は得られない、と決めつけれるのかな?

Jef:いや、別の自由を手に入れるさ。

Daniel :別の自由って?自由にはいろいろあるということ?

Jef:根本的な自由というものに到達するには複数の道があ る。演奏者は作品に浸透するように、作曲家のエスプリの中に身を置くように努める。別の言葉でいえば、彼と対話するわけ。そして演奏しながら自分の思いを語るんだ。作品について自分がどう思うかを語ってるんだ よ。演奏しながらの自己表現。一旦作品が自分にしみ込んだらば、まるで自作の楽曲のように演奏も自由になれる。しかしね、そこに到るには、作品とみっちり取り組まなきゃだ。インプロだってそうなんだよ、相当の<仕事>が必要なんだ。

Daniel : もし一言で自己紹介するなら、ジャズ・ミュージシャン、それとも…?

Jef : ミュージシャン、インプロヴィゼイション・ミュージシャン。 僕は、ワールド・ミュージックも演るからね。マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなど)系、アフリカ系音楽とか。ラテン系ミュージシャン達ともかなり長くやったな。キューバ人達もね。Alfredo Rodriguez(アルフレド・ロドリゲス)というピアニストとか。彼とは4,5年やったなあ。今現在は、ちょうどマグレブ系音楽とジャズの時期にいるよ

Daniel : アーティストは、他の人たちに比べてずっと自分の人生を活かして生きてると思う?

Jef: 問題はそういうことじゃないと思うね。何かを至極 明確にターゲットにして生きている、それがソイツにとってアートなんだ、シンプルなことさ。ソイツはそれに一生かかわって生きてゆくのさ。

Daniel:一生をそれに関わって生きる、と。むしろ逆で、その<何 か>がソイツの人生に生気を吹き込むんじゃないかな?

Jef: いや。あらゆる芸術の学習は、それこそ、ソイツの 人生 を一生かけて追及するものなんだ。今、君に話してるように、音楽について話すこともそう。まるで母国語のそれについて話す。つまり自然に話せるレベルまで音楽を知ること。

Daniel :たとえばジェフの場合は音楽だけれど、ある一つの専門の世界に徹底的に入って行った場合、アーティスト以外の人達の人生との間にギャップが生まれるのだろうか? ジェフはそういうのを感じているかな?

Jef :少しはね。例えば、インテリ層と一緒にいる時とか。
おしゃべりが好きな人達っているだろ。自分で<それ>に取り組むのでもなく、生気を送りこむのでもなく、<それ>について喋るのが楽しいって人達。こういう人は沢山いるし、とにかく喋り好きだな。ランガージュの世界にいる人達ね。もちろんその中には素晴らしい話し手、作家、思想家がいるわけだけど。僕自身は、言葉では思考してないと思ってる…。哲学者たちは、<我々は言語を用いて思考する>と言ったけれど、僕はそうは思わないね。

Daniel : ジェフにとって音楽は自由へのドアを開いたわけだけれど、では逆に、<閉じ込められている>ってこと は、どんなこと?

Jef : 外に出られないこと(笑)。自分から生成されたもの、周りからの刺激によって自分に湧いて来るあらゆる音を使って、音楽を作っていけないこと。演奏している時、僕にやって来るあらゆる音を自分で構築するからね。つまり自分自身の瞬時の投影だね。それはシンクロ作用ではなく、そのちょっと後やってくる瞬間、微妙な近未来と言えるな。近未来形のインスピレイションさ。生成するってすごく大切だから。だって欲求を常にケアしているのがこの<投影>なんだから、結局。つまり、そこでヴェクトルが生まれる、ダイナミズムが生れるんだ よ。

Daniel:アーティストかどうかに関わらず、人は皆、心の奥に<夢>を持っていると思う? もし、人生で達成できたとしても、本人とはかなり縁遠かったような、そんな 夢…。

Jef :<夢>って、自分自身への投影なんだ。誰かの話や演奏を聞いて、または誰かがダンスしてるのを見て、歩いてるのを見て、はっとするような気づき、じゃないか な…。それを自力で探して再体験すること…。たいていは、世の中を観察してさ、自分の外側に夢を探すけれど。ひとたび心底気に入るものが見つかれば、それなん だよ…。

JEF SICARD

Daniel :とはいえ、僕たちが抱く夢って、子供時代とか、出会い、体験、イメージ…から来てるのじゃないかな?

Jef:確かにね。僕にはプラスティックの小さなハーモニカの思い出があるな。4、5歳だった。ちょっとした<感じ>を思い出して吹きたかったんだ。それで、学校で聴いていたその<感じ>を思い出してそのメロディーを吹けたんだよね。その時は、ものすごく誇りに感じたものな。夢には様々な要因があって、それが連鎖反応して精製されてゆくのは確かだな。色んな要因の中でも、特に重要なのが多分あるんじゃないかな?それが継続の力の素となって。音楽をやってて、時にはキビシイこともあるんだよ。継続して取り組むためには、ある種、頑固じゃなきゃだめだ。満足するって絶対にないからね。やっていることの不完全さを自覚しているわけだから。

Daniel :不満足というのは、テクニック的に、それとも別のこ と?

Jef :音だったり、曲のメリハリだったり、ヴァイブレイションの音質だったり…そりゃあいろいろ。音のメリハリってすごく大切だし、それに、ニュアンス、インパクト、こもり具合…。ひとつの音を出すのに、沢山のやり方があるか ら。日本人は尺八でそれらのことを良くわかってるよ。最高の楽器だよ! パリでコンサートを幾つも観た。ひとつの音階を出すのにすごく異なった<吹き>を試みてるんだ。これはもう完璧な自由。僕の知る限り、尺八は最も自由な笛だね。低音から高音までのグリセンドができる。着地点がないような浮遊状態の連続だよ。

Daniel : 尺八にはメロディーがないよね。

Jef :僕らが認識できない、そんなメロディーがひとつあるん だ。

Daniel :そう言われれば、その通りだね。ジェフの今までの人生って、自分の抱いてた色々な夢に呼応してると 思う?

Jef :そうね。いくつかね。僕の夢は、とても遠くの人達とディスカッションすること。そう言えば、日本で知られているトランペット・プレイヤーの沖至(おき いたる)とプレイしたことがあるな。遠ければ遠いほど、その人とのコミュニケイションは強烈だ。二人のミュージシャンの音楽的アプローチが相当違うわけだから、そりゃあ、お互いにすごく興味をそそられる訳で、至って当たり前の 話 で。ジャズのエッセンスは1900年のニューヨークに始まって以来今日まで、文化の巨大なミックス、出会いなんだ。エスペラント語とちょっと似てるかな、つまり、一つの共通のランガージュを生んだということ。インターナショナルな音楽言語体系とでも言おうか。 ある演奏法に則ることによって、自分のランガージュをキープしつつも、異なる文化に溶け込むことができる。まるで共通の言語を使っているかのごとく、異なる音楽文化を調和混合させるシステムなんだ。音楽文化って、みな独自の厳密な基準、約束事を持っているわけだから。だけど、ジャズメンによって見出された、ある演奏のルールのようなものがあって、それはラテン系、アフリカ系、インディアン系、マグレブ系の音楽との共演を可能にするわけ。それがジャズさ。文化のこのミクスチュアから生まれたランガージュ(音楽言語体系)なんだよ。

Daniel :住んでいる場所について聞きたいんだけれど、この地区はジェフの仕事に影響を与えてる?

Jef :僕はカフェに行ったりすることないからなあ。

Daniel : じゃあ、この地区の雰囲気、ストリートの影響はないん だ。

Jef:Belleville(ベルヴィル)を自転車で走ったり、マルシェ(パリ市が各区に提供する屋外市場)に行ったり…。Alger(アルジェ。アルジェリアの首都)に滞在していた時のようにうろうろしない な あ。あそこでは道で、待ってるわけ…。MK2(フランスの大手映画館グループのひとつ)の映画を見に行くよりすっごく沢山の事が起こるんだか ら ! 人生の集約、色んなシーンが次々とね、ひしめいてるね。

Jean-Michel :パリではそういう面が失われたと思う?

Jef : そうね。皆、<通る>という目的のために道にいるだけ。生活がそこにあるわけじゃない。たぶんマルシェが建つ時だけは別だけど。その時は、ちょっとした滞りが生まれるけれどね、そのくらいだよ。それと気候もあるな。 夏だと様子が違うだろ、(パリにも)旅行者がウロウロしてるから。

Daniel :パリみたいな大都市では、街のリズムが皆を用事に向かわせるのじゃないかな?

Jef :<何かしなきゃ>というストレスがあるんだろうな。僕たちは、何かをじっくり眺めるという世界にはいないよね。

Daniel :ジェフは、そんな風に生きれるんだ? 自分のリズムを見つけて、ある種、じっくり見つめ思索する世界にいる?

Jef:僕はグループの中でプレイしてるから、楽曲を学ばなくてはならないし、そのためには自分をメンテナンスしなくちゃいけない、肉体的にも ね…。<じっくり見つめて>の生活ってそれは贅沢なもんだよ。それって<○○道>という意味あいでの<道>と呼べるものかも知れないな。いずれにせよ、音楽をやる時に、自分の一部は活動しながら、別の一部が自分を凝視しているからね。僕たちは、この二つを同時にうまくやることができるのさ。凝視しつつそれに取り組む。それがなぜ二律背反なのかわからないな。

Daniel :ひとりのアーティストの仕事が、他人が自由へ向かうように影響を与えたり、ヘルプするようなツールとなり得るだろうか?

Jef:思うよ。特に音楽はね、それとグラフィック・アートとね。

Daniel :そのツールの最大のものって?

Jef:まずは、<問い>だろうな。悪くないだろ? もし理解できなければ、それが<問い>を生 む。「何故だろう」って。

JEF SICARD

Daniel :パリでお気に入りの地区ってあるの?

Jef :パリは、生きるのに良い所とは思わないな。おっと、そうだ、<les Sept Lezards(レ・セット・レザー)、le Sunset(ル・サンセット)>っていう場所もあるからな…(訳注:いずれも、パリで名の知れた小規模のジャズ・カフェバー)。

Daniel :それって地区じゃないけど!?

Jef:マレ、レ・アール、カルチエ・ラタン、モンパルナス地区ってことさ! (訳注:Le Marais, les Halles,
le Quartier latin, Montparnasse:いずれもギグが毎晩プログラムされているジャズ・カフェバーのある地区)

日本語訳:山下まる

JEF SICARD

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