HOME
RENCONTRES
BLABLA
KIKOERU


PASCAL GIORDANO

独占インタビュー
2010年5月8日パリ19区ビュット・ショーモン公園にて。2016年4月29日パリに向かう電車のなかで改訂。

TRADUCTION JAPONAISE (2016) SACHIKO ISHIKAWA

夢に近づくために踊るのか…。というより、自身の奥深く潜む夢に呼び起こされ、踊らずにはいられないのだろう…。踊る男は、動かずにはいられない…ダンサーであり振付師であるパスカル・ジョルダーノ氏に出会った。

PASCAL GIORDANO

ダニエル:自分について、簡単に紹介するとしたら?

パスカル:踊りで?

ダニエル:そのほうが君にとってはシンプルってこと?

パスカル:そういうわけでもないけど。ぼくは表現するのにまず体から入るものだから。

ダニエル:つまり君はダンサーだ、ってことかな?

パスカル:うーむ…、まずはなによりもひとりの人間だね。踊る男、というか。ダンサーというのはぼくの職業さ。ほかにもあるけど。ダンサーだったりもすれば、振付師だったりもするし、アーティスティック・ディレクターだったり、ファシリテーターだったり、教師だったり…。

ダニエル:どうして踊るようになったの?

パスカル:ああ! それは必然だよ。表現することが、ぼくには必要だったんだ。まずはデッサンや絵画から始めたんだけど、踊ることはずっとしてた。ある意味、両親から受け継いだものといえるね。

家族パーティーなんかでさ。踊りの趣味嗜好とかね。音楽もそう。それで後年、画家とか役者とか、出会った人たちに言われたんだ。「君は踊りが好きなのに、なんで踊らないんだい?」って。そうやって周りの人にその気にさせられちゃったんだよね。それでしばらくして、思い切ってダンススタジオに足を運んだんだ。そしたら、「そうだ、これだ!」って自分でも実感して。それからは一度もやめずに続けてる。あのとき、もう22歳だった。

ダニエル:思春期の頃、芸術で生きてゆく予感はすでにあった?

パスカル:うん、13か14の頃、詩を書いてたなあ。タイトルは「ボヘミアンな人生」。自分の人生について思うこと感ずることを書いたんだ。ぼくのダンスカンパニーはHAPAX COMPAGNIEっていうんだけど、今思うと、あの詩を書いたってことと、あの時期こそがHAPAXだったんじゃないかと思う。人生でたった一度きりしかないってこと。本当に行くべき道を見つけるきっかけ、引き金になったこと、だね。

ダニエル:聞いていると、ご家族からの反対はなかったようだけど?

パスカル:そうとも言えるけど、でも、芸術家になりたいとはぼくは思春期の頃から言っていたんだけど…最初は画家としてね。あの頃は、普通の生きかたをしたほうが賢明だと両親に諭されたよ。芸術じゃ食べていけないって。だから、ぼくも他の道を探して、あんまり選択肢はなかったけど、それで電気関係の道に進んだんだ。だから、芸術の研鑽なんて夢の中だけの話になっちゃった。

それで、何年かたって、踊りを始めたときに両親に言ったんだ。「ぼくが本当にやりたいものはダンスしかないんだ」って。わかってくれたよ。でも、経済的な援助はしてもらえなかったから、ダンスの訓練の費用を払うために働いた。でもそれがよかったね。今、ダンスの仕事の中で、よく電気の特色なんかも使うんだ。エレクトリック・ダンサーと言われることもあるよ。おもしろいよね。

ダニエル:ぼくは、夢をテーマにインタビューをずっと続けているんだけど、「夢」と言ったときに、みんながみんな同じようにこの言葉をとらえているわけではないことに気がついた。だから、「道」と言い換えることにしたんだ。

人生のシナリオって、いくつもの別の可能性のものがあると思う? あるいは、ひとりひとりの人生には、それぞれたったひとつのシナリオしかないものだろうか。

パスカル:まずは、幸いにも夢というものが存在して、ぼくらは夢を見る…。夢を見て、夢について語り合うこともある。でも、夢を生きるほうがもっといい。ぼくにとっては、それが我が道を行くってこと。自分が選んだ自分自身の道っていうのがある。

ときには、これだと確信できるまで、いくつもの道を試すこともあるよね。夢に見た生きかた、自由な、幸せな…ぼくはまだ何も書かれていない真っ白な道だと言いたいね。

PASCAL GIORDANO

ダニエル:わかるよ。でも…たぶん人にはいくつもの実現可能そうな人生のシナリオがあるんだけど、結局はひとつしかできないというわけで…。ときどき、実現されないでいる人生のかけらが自分の奥底のほうで音を立てているようなことなんてない? エコーのような、遥か遠くからのノイズのような…ささやき声が聞こえる?

パスカル:たぶん遠すぎて、ぼくには聞こえるかわからないな…。

ダニエル:多くの人は、それどころか自分の理想に耳を貸そうともしない。そして、不幸な疲れた人生を送っている…。なぜ、声を聞こうとしないんだろう?

パスカル:なぜかって? むしろこんなふうに言いたくなるときがあるよ。「どうして声を聞くことができないんだ?」って。ぼくは思うんだけど、この社会には、いろいろとぼくらの安全を守ってくれるけど、間接的にそういった夢を生きることを妨げるものがあるよね。ある意味、危険なんだけどさ。

ダニエル:安全じゃない道を思い切って進めば、それが正しい道だってこと?

パスカル:そうとは限らないよ! 大事なのは、何をしたいかってことで、それはみんな分かっているんだと思う。ただ、実現するのに時間がかかることもあって。

ダニエル:どう生きたいのかみんな分かっている、と君は思うの?

パスカル:うん、そう思うよ。そしてまず夢見るんだ。それに向かって生き始めるまではね。

ダニエル:そういうのって、いつ分かるものなんだろう? 成長とともにだんだんに形成されていくのかな? それとも子どもの頃とか、もっとずっと小さな幼児の頃とか?

パスカル:すごく早いうちにってこともあるんだろうけど、みんな同じじゃないよね。どこか心の奥では分かっていても、それからその思いを育てて夢に向かって生きていく方法を見つけないと。

ダニエル:我が道を行くとき、目の前の現実にしっかりと身を置いているときというのは、もう不安なんて感じないように思うけれど、だとすると、不安とか迷いというのは結局、他人の目にどう映るか、ということからきているのではないかな? もし、世の中にたったひとりで自分の道を歩いてたとしたら、きっと違ってたんじゃないかしら。

パスカル:確かに! でも、ぼくは他人の目も必要だと思う。人間は全く孤独ではいられないからね。ひとりじゃ同じところをぐるぐる回るだけにもなりかねない。他人の視点とか意見とかもないと。鏡みたいなものかな?

ダニエル:でも、他人の目がブレーキになることもあるでしょ。君のことを心配したり、彼ら自身のことが心配だったり…。

パスカル:うん、他人の目線はブレーキになることもあるね。でもその場合は、その意味を理解すべきだろうね。これが本当に自分の生きる道なのだと思ったら、他人の目なんて妨げにはならないよ。逆に彼らのほうが迷いだすかもね! でも最終的には彼らを安心させて考え直させることもできるかもしれない…うん、最後にはね!

..............PASCAL GIORDANO

ダニエル:正しい道を行っているかどうかは、どうしたらわかるんだろう?

パスカル:(笑)直感というか感触というか…手応えとか、眠ってる時の夢とかでもね。

ダニエル:出会ったアーチストたちみんなに頼んでいるんだけど…協力してくれないかな。このインタビューを読んだ人たちが何かを見つけられるように。何か、彼らが前へ進むための糧になるようなものを…。

これは、時間の概念についての問題かもしれないな。ぼくは最近、「夢」というより「道」について話そうとしているんだと気づいたのだけど…「道」は前進とか進展ということに結びつくけれど、以前に「夢」と言っていたときには、もっとなにか、最終の目的とか目標みたいな感じだったんだ。
君はどう思う? 道、もしくは夢というのは、時とともに形成されてゆくものなのかな。ぼくたちはそのために生きているのかな。それとも、道というのは既にそこにあって、ぼくらが見つけるのを待っているのかな。ちょっとクレイジーな質問だけどね!(笑)

パスカル:思うに、道は形成されていくもの、でも何かはもうそこにある、って感じ!

ダニエル:材料が、ってこと?

パスカル:うん…いや、ちがう…。わからなくなっちゃった(笑)…わからなくなっちゃうっていうのも悪くないけど!(笑)…ぼくが思うに、何かはすでにそこにあるんだ。何かは。そしてある時、それを取り戻す、あるいは発見する。そのときから、自分の道づくりが始まって、前に進みつつ、夢見てゆくんだ。

障害がなければ、そして精一杯注意を喚起すれば、その何かや材料は把握できるはずなんだ。それには時間がかかるけど、それが道を形成していくってことなんだと思う…。

ダニエル:すでにある何か、ってなんだろう?

パスカル:すべての材料は早い時期にもうそこにあるんだ。要素というか、兆候というか、夢、運というか…。ぼくらをその気にさせて、道になっていくようなものがね。

ダニエル:踊りって、踊る本人たちに多くのことをもたらすけど、では踊りを見る側にとってはどうなんだろう。視覚的な喜び以外にもたらされるものってあるのかな?

パスカル:踊りは娯楽であり、踊ったり見たりして楽しむものだけど、疑問を呼び覚ましたり思索の栄養になったりもするよね。ぼくが舞台をするのは、楽しい時間を過ごすためだけじゃないよ。何かを伝えようとする…気持ち、感覚とか。観客は、それを受け取っても受け取らなくてもいいんだ…。踊りを見るのに、理解しなきゃいけないものなんてなにもない、ってことは理解してほしいね。思うに、踊りは踊りでしか説明できない。踊りの中にこそ息づいているんだ。ぼくは、踊るってことと、踊りをするってことは違うと言いたい。踊りって見る者にそのまま直接伝わってくるもので、観客はそれぞれ自分の好みや能力によって受け取るんだ。

ダニエル:もっとシンプルに言うと、ただ自分の目の前で踊るダンサーを見ているだけで、振り付けとか演出のことなんて話さなくても、動く身体を見ているだけで豊かになれるものだろうか?

パスカル:もちろん! 踊り手がぼくらに伝えようとしているもの、送り届けようとしているものって、なに? 何かを触発しているはずだ。あとは,見る側の想像力しだいだね。それぞれが自分の経験を通して、踊りに浸るんだ。

ダニエル:ぼくもそう思うよ。でもそのとき、何が起きているんだろう?

パスカル:踊り手がいて、踊りがあって、周りの状況すべてもある。景色や空間、音や音楽。全部でひとつ。踊り手だけじゃない。その全部がぼくらに何かをもたらすんだ。そのひとつひとつのあいだに、橋が渡されるんだ。それからぼくらの内面の状態というのもある。踊り手を見ているとき、見ているぼく自身が、その瞬間のことを受容し味わうことができるようにオープンでいるかどうか。

ダニエル:こういう場合にも同じことが言えないかな。ベンチにに座っている人が、目の前の男が歩いている様子を見て心を動かされる…。この人は踊りが展開するのを見たわけじゃなくて、ただ単にひとりの男が歩くのを観察しただけなんだけれど、状況はひどく似ている。

パスカル:うん、すごく似てるね。

ダニエル:そうなると、もう舞台の審美的な側面についてなんて語れないね。…としたら、何について語る?

パスカル:(笑)エネルギー、振動、身体の状態、存在のありよう…。

ダニエル:ちょっと日本的な観念、仏教の禅的なものに通じるかな?(笑)ぼくらの会話、そろそろ日本に向けて旋回! つまるところ、踊り手と観客のあいだにミラクルなことが起こっているというわけだね。彼らのあいだに起こっていることこそがミラクルなんだと。

パスカル:まさにその瞬間に起こっていることがね! だれかが通り過ぎ、それを見た自分に何かが起こる、その瞬間。それから彼は行ってしまって、もうぼくは彼を見ることはないんだけど、でも自分のなかに一生消えないかもしれない何かが残るんだ。とあるフェスティバルで *Chant à la liberté sauvage* っていう小さな作品を踊ったことがあるんだけれど、マロニエの並木道で踊って、終わったときに男の人がぼくのところに来て言うんだ。「ありがとう、これからはこの木々が今までと違って見えるよ」とね。彼には何かが起きたってこと。

PASCAL GIORDANO

ダニエル:作品を発表するときのアーチストの責任について思うことはある?

パスカル:自分のしたいことをすべきだと思っている。けど、自分のためだけにというのではダメだ。みんなのためじゃなきゃ。自分のためであり、チームのためであり、観客のためであり、通りかかった人のためであり…。心に触れて、とらえて、それぞれの想像力に何かを引き起こすのが大事。

ダニエル:観客の反応が君のダンス、君の身体の動きに影響するってことはある?

パスカル:一体になるよ。ぼくらは観客に起こっていることを感じ取って、観客はぼくのダンスで起きていることを感じ取って、それが全部混じり合ってひとつになる。観客の反応は舞台にすごく影響するよ。真の対話が生まれる。お互いが見えない橋でつながっている。それがぼくを奮い立たせる。そうでなかったら、ぼくのやっていることなんて意味がないよ。

ダニエル:さて、このへんでそろそろ日本について話したいんだが。まずはひとことで何か言ってみてくれないか。

パスカル:静寂!(笑) 黙っているって意味じゃなくて、静けさがなにかを生むっていう、あの静寂。日本ではそれが厳然としてあって、日本人にもね。それが、彼らの時間の観念を規定しているのだと思う。

ダニエル:ふたつの文化のいいところをお互いに学び合うとしたら?

パスカル:フランスは、日本の落ち着きを見習うといいよね。

ダニエル:内省する時間ってこと?

パスカル:たぶん、そういうことかな…。フランスは日本に何を提案できるかな…ちょっとわかんない(笑)。

ダニエル:(笑)そんな、謙遜しないで! 日本人がフランスを思い浮かべるときに感嘆するのってなんだろう?

パスカル:たぶん、多様性! フランスは人も景色もいろいろだし。

ダニエル:うまいことを思いついたね!(笑) じゃあ、君が日本から得たものは?

パスカル:内的意識と空間認識! ある種の知覚。ぼくのものの見かたは豊かになったよ。ぼくの人生についても、人生というものそのものについても、それからダンスについてもね。

ダニエル:空間と言ったのは、人が空間を占める方法のこと? それとも人が自由に使える空間のこと?

パスカル:どっちも! 空間の構成の仕方と、その構成の中での動き回りかたと。時間に関してもいえる。「静寂」って言葉に通じるよ。それに比べると、フランス人はもっと興奮しているというか、散り散りだっていうか。

ダニエル:それが、まさしく日本にとって魅力的に映るフランスのイメージなんじゃない? 散り散りということと自由というのは、実は同義じゃないかな?

パスカル:確かにフランスは自由の国ってイメージがあるね。フランス人は自由だっていう…。でも、実際はそれほどじゃないと思う。

ダニエル:ぼくたちは、両極端なふたつの文化を目の前にしているってわけだね! 世間の目がこわくてなかなかいろんなことができない日本と、人生は一度きりなんだから思い切り楽しまなきゃ、人のことなんてどうでもいい!っていうフランスと。ここでは何をしてもいいと思っている人がいっぱいいる一方で、逆に日本では他人の目がこわくて思い切ってできない。自由な人の定義って何だと思う?

パスカル:自由な人というのは、自分の好きなことを好きなときに好きなようにする人ってわけではなくて、自分のすべきと思うことをしている人。良心にのっとってね。自分の夢を徹底的に夢見て人生を歩んでいる人…他人が何と思おうとも。

................AMBRE JAUNE

......................................................................................................Ambre jaune photo © Véronique Baudoux

ダニエル:君のダンスと日本の関係をもっと話してくれないか?

パスカル:うん、確かにぼくのダンスには、日本の文化の影響が大きいね。日本の自然の観念が好きだよ。なにも具体的なことじゃないんだ。例えば、『さわさわ』っていうぼくの作品は、音からインスピレーションを得たんだ…ここでは見つからないようなことを、ぼくは日本では見つけるんだ。ここにもあるのかもしれないんだけど、ここじゃなくてあっちにいると見つかる。日本では、自然、時間、空間のあの独特さに惹かれるね。日本の伝統と民間芸能も好きだよ。

ダニエル:日本のアーチストで君が影響を受けた人はいる?

パスカル:うん、名前がぱっと浮かんだ人がふたりいる。ひとりは、舞踏カンパニー山海塾の創立者であり振付家であり、60歳を過ぎた今もダンサーでもある天児牛大(あまがつ うしお)。舞踏では、遠藤公義(えんどう ただし)の踊りの繊細さとエスプリも大好きさ。ぼくの踊りにも似ているところがある。それからもうひとり、造形美術と現代音楽の分野で池田亮司(いけだ りょうじ)。

ダニエル:フランスのアーチストで君のダンサーとしてのキャリアに影響を与えた人はいる?

パスカル:モダンダンスのジャン・セブロン。フランス人じゃないけど、ステファン・ウェンタもぼくの人生に影響を与えた大事な人物だ。ショパンの音楽によるクラシックダンスをぼくに教えてくれた。それから、タップダンスのヴィクター・クノ、ジャズダンスのマット・マトックス…とほかにも何人か。彼らとの出会いがね。長く続いたものも短いものも。みんなぼくにとっては一生の宝さ。

ダニエル:街の影響というのは、君の創造性にとっては根源的なもの? もちろんパリのことを言っているんだけど。

パスカル:うん、ぼくはパリっ子だからね。日本やよその国みたいにすごく遠いところに行くことがあっても、やっぱりパリに戻ってきたくなるよ。パリを離れることはできないね。ぼくの作品づくりには大切な街なんだ。今はトゥールに住んでいるけど、パリから遠くはないよ(笑)。トゥールは小さなパリだと言う人もいるしね…。

 

※写真はすべて、Pascal GIORDANO と COMPAGNIE HAPAX の所有,

CHANSON DANSE...............

.............................................................................................Chanson danse photo © Jacques Debbloaere

 

 

.................................................HAPAX CIE SITE OFFICIEL

VERSION FRANCAISE FRANCAIS
NIHONGO
LOGO KATATSU 2015
la trace